調査に踏み切りたい。でも、浮気をされた側の自分が調査費用まで負担するのは、どうにも納得がいかない——その感覚は、まっとうだと思います。裏切ったのは向こうなのに、確かめるお金をこちらが払う。この理不尽に折り合いをつけるためにも、「費用を相手に請求できるのか」は依頼前に知っておきたいところです。
結論:浮気調査の費用は、裁判では「不貞の立証に必要かつ相当な範囲」で一部が損害として認められた例がある一方、全額の請求が認められるケースはまれです。現実には、慰謝料の示談交渉の中で調査費用分も含めた解決金として合意を目指す形が近道になります。この記事では、認められる条件、請求できる相手、交渉での回収方法、依頼時に残しておくべき書類を解説します。
調査費用は相手に請求できる?——法律上の位置づけ
配偶者の不貞行為(浮気による肉体関係)は法律上の不法行為にあたり、被害を受けた側は損害賠償を請求できます。問題は、探偵に払った調査費用がこの「損害」に含まれるかどうかです。

結論から言うと、ここは争いになりやすいポイントです。裁判所は調査費用を「請求者が自分の判断で支出した費用」と見る傾向があり、請求しても認められない、あるいは支出額のうち一部にとどまる判断が多いのが実情です。
一方で、相手が不貞を否認しており、調査なしには立証が困難だったようなケースで、調査費用の一部が不法行為と相当因果関係のある損害として認められた裁判例もあります。「請求できない」と諦める必要はありませんが、「全額戻ってくる」前提で調査予算を組むのは危険、というのが実務的な相場観です。
認められやすくなる3つの条件
裁判で調査費用の賠償が認められるかどうかは、おおむね次の3点で判断されると言われます。
- 調査の必要性:相手が不貞を否認している、自力での証拠収集が不可能だったなど、探偵に依頼せざるを得ない事情があったか
- 立証への貢献:調査報告書が実際に不貞の証明に役立ったか。空振りの調査分は認められにくくなります
- 金額の相当性:調査の規模や期間が目的に照らして過大でないか。長期間・高額の調査は「そこまで要らなかった」と判断されるおそれがあります
裏を返せば、日時を絞った効率的な調査で確度の高い証拠を取ることが、費用請求の面でも有利に働くということです。やみくもに長く調べるほど、賠償の対象からは遠ざかっていきます。
誰に請求する?——配偶者と浮気相手の関係
不貞行為は、配偶者と浮気相手の2人による共同不法行為です。慰謝料は配偶者と浮気相手のどちらにも請求でき、調査費用もその損害賠償の枠組みの中で扱われます。ただし、同じ損害を両方から二重に受け取ることはできません。
時効にも触れておきます。不貞による慰謝料請求権は、不貞の事実と相手を知ったときから3年、行為のときから20年で消滅するとされています。調査で浮気相手の素性が判明した日は、この起算点の意味でも重要です。
私が浮気相手に請求したとき、交渉の空気を変えたのは調査報告書の存在でした。調査費用の全額が戻ってきたわけではありませんが、報告書がなければ相手は認めることすらしなかったと思います。費用は「取り返すもの」である前に、「交渉を成立させるための土台」なのだと実感しました。
現実的な回収の形——慰謝料交渉に織り込む
裁判で調査費用の賠償を勝ち取ることだけをあてにするより、実務では示談交渉の中で解決する形が現実的です。つまり、慰謝料の金額交渉の中で調査費用の負担分も織り込み、総額として合意する方法です。裁判と違って厳密な費目の切り分けが要らないため、当事者が納得すれば柔軟な決着ができます。
ここで重要な注意点があります。慰謝料の交渉を本人に代わって行えるのは弁護士だけです。探偵ができるのは調査と報告書の作成までで、「回収まで代行する」とうたう探偵社があれば、それは法律に触れるおそれのある業者です。調査と交渉の役割分担は弁護士と探偵どちらに頼むかの記事で詳しく解説しています。
私の場合、弁護士から「調査費用を別立てで請求するより、解決金の総額で考えましょう」と助言されました。費目ごとに争うより、最終的にいくら受け取って区切りをつけるか、という発想です。実際そのほうが交渉は前に進みましたし、気持ちの整理もつけやすかったです。
とはいえ、交渉の土台になるのはあくまで調査の結果です。まだ調査を依頼していない段階なら、「この状況なら費用の請求まで見込めそうか」という見通しごと、無料相談で聞いてしまうのが早道です。






