「既婚者だとは知らなかった」。夫の浮気相手に慰謝料を求めた途端、そんな言葉が返ってきて、悔しさで眠れない夜を過ごしていませんか。家庭を壊された側なのに、なぜ相手の言い分ひとつで請求が揺らぐのか、納得できない気持ちは当然です。この記事では、その主張が法的にどういう意味を持つのか、どんな証拠で崩せるのかを整理します。
結論:不貞の慰謝料請求には、相手が既婚と「知っていた(故意)」か「注意すれば知り得た(過失)」ことが要件になります。ただし「知らなかった」という主張は、交際の経緯や連絡内容などの状況証拠を積み上げることで崩せる余地が十分あります。この記事では故意・過失の考え方、有効な証拠の具体例、立証の組み立て方と注意点を解説します。
「知らなかった」の主張はなぜ持ち出されるのか
不貞行為への慰謝料請求は、民法上の不法行為に基づくものです。請求が認められるためには、浮気相手に「故意または過失」があったこと、つまり既婚者だと知っていたか、少し注意すれば知ることができたと言える事情が求められます。
だからこそ、請求を受けた側の定番の反論が「既婚者と知らなかった」なのです。実際、マッチングアプリで独身と偽られていた、年齢や生活ぶりから結婚を疑う手がかりがまったくなかった、といったケースでは、故意も過失もないとして請求が認められにくくなることがあります。

ただし、これはあくまで「本当に知りようがなかった場合」の話です。口先だけの「知らなかった」と、法的に通用する「知り得なかった」の間には大きな距離があります。交際の実態を示す事実を丁寧に集めれば、主張を崩せるケースは少なくありません。
故意・過失を示す証拠の具体例
反論の核になるのは、「知っていたはず」「知り得たはず」と示す状況証拠の積み重ねです。既婚者と知らなかったという主張に対して有効とされる証拠の代表例を整理します。
| 証拠の例 | 何を示せるか |
|---|---|
| 「奥さん」「家族」に触れたLINEやメールのやり取り | 既婚を前提に交際していたこと(故意) |
| 結婚指輪をつけた写真や、指輪の話題が出た記録 | 既婚を認識できる状況だったこと |
| 同じ職場・共通の知人がいる関係 | 既婚が周知の環境で知り得たこと(過失) |
| 自宅への出入りや家族の存在がわかる場面 | 生活実態から既婚を認識できたこと |
| 「平日夜しか会えない」「休日は連絡が取れない」交際パターン | 家庭の存在を疑う手がかりがあったこと |
一つひとつは小さな事実でも、時系列で並べると「これだけの事情がそろっていて知らなかったとは考えにくい」という説得力が生まれます。トーク画面や写真は、日付がわかる形で保存しておくことが大切です。
私が請求したときも、相手は最初「知らなかった」の一点張りでした。でも、夫が家族の話をしていたトークの画面が残っていて、主張はすぐに崩れました。感情的に問い詰めるより、静かに記録を集めておいてよかったと今でも思います。
立証の組み立て方——「知り得た事情」を時系列で積む
立証の責任は、基本的に請求する側にあります。とはいえ、「知っていた」ことを直接証明できる場面はまれで、実務では「知り得た事情」をどれだけ積み上げられるかが焦点になります。
組み立ての手順はシンプルです。
- 二人の関係がいつ始まったのか、わかる範囲で起点を置く
- 「既婚を認識できたはずの出来事」を日付とともに並べる
- それぞれの裏付け(画面保存、写真、記録)を対応させる
ここで壁になるのが、「関係の実態を示す証拠がそもそも手元にない」という問題です。トークの断片だけでは交際の深さまでは示せず、それだけでは足りない証拠にとどまることもあります。二人が実際に会っている場面の記録が要ると感じたら、その部分は自力で追うよりプロに任せるほうが安全で確実です。






