家族が行方不明になってから、もう何年も経つ。預金の解約も、不動産の名義変更も、保険金の請求も、本人がいないまま止まっている——。そんな状態を法的に整理する制度が失踪宣告です。ただ、家庭裁判所の手続きと聞くと、費用がいくらかかるのか、弁護士に頼まないと無理なのか、不安になりますよね。この記事では、失踪宣告の費用の内訳と専門家報酬の目安、手続きの流れを順番に解説します。
結論:失踪宣告を自分で申し立てる場合の実費は、収入印紙800円・官報公告料・連絡用の郵便切手代を合わせて1万円前後です。弁護士や司法書士に依頼する場合は別途報酬がかかり、数万円から数十万円程度と依頼範囲や事務所により幅があります。失踪宣告は家庭裁判所の手続きで、普通失踪は7年、危難失踪は1年の生死不明が要件です。この記事で費用の内訳と流れを解説します。
失踪宣告とは——普通失踪7年・危難失踪1年
失踪宣告は民法に定められた制度で、生死不明の状態が一定期間続いた人について、家庭裁判所が「法律上死亡したものとみなす」宣告をするものです。要件は2種類あります。
| 種類 | 要件 | 死亡とみなされる時点 |
|---|---|---|
| 普通失踪 | 生死不明が7年間継続 | 7年の期間が満了した時 |
| 危難失踪 | 戦争・船舶の沈没・震災などの危難に遭遇し、危難が去った後1年間生死不明 | 危難が去った時 |
申立てができるのは、配偶者・相続人・受遺者など、宣告について法律上の利害関係を持つ人(利害関係人)です。宣告が確定すると法律上死亡とみなされるため、相続が開始し、婚姻関係は解消されます。止まっていた財産や身分の手続きを動かせるようになる、というのがこの制度の意味です。
自分で申し立てる場合の実費——合計1万円前後

失踪宣告の申立て費用(実費)は、意外なほど小さくまとまります。
| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 収入印紙 | 800円分 |
| 官報公告料 | 数千円程度(裁判所が案内する所定額) |
| 連絡用の郵便切手 | 数百円〜数千円程度(家庭裁判所により異なる) |
合計すると1万円前後が目安です。金額は改定されることがあるため、申立先の家庭裁判所で最新の額を確認してください。
申立先は「不在者の従来の住所地(または居所地)」を管轄する家庭裁判所です。よく「失踪宣告 住所不明でも大丈夫か」と心配されますが、現在の住所が分からないことはこの制度の前提そのもの。いなくなる前に住んでいた場所を基準にします。
主な必要書類は次のとおりです。
- 申立書(裁判所の書式)
- 不在者の戸籍謄本・戸籍の附票
- 失踪を証する資料(行方不明者届の受理番号の控え、捜索の経過が分かる資料など)
- 申立人の利害関係を証する資料(親族関係が分かる戸籍など)
警察に行方不明者届を出していれば、その記録が「探しても見つからなかった」ことを示す資料の一つになります。まだの方は捜索願(行方不明者届)の出し方も確認してください。
弁護士・司法書士に依頼した場合の報酬相場
失踪宣告は本人申立ても可能な手続きですが、書類の収集や裁判所とのやり取りに不安があれば専門家に依頼できます。
- 司法書士:申立書類の作成支援が中心。報酬は数万円から十数万円程度が目安とされます。
- 弁護士:代理人として手続き全体を任せられます。報酬は十数万円から数十万円程度が目安とされ、相続や離婚などの関連手続きをまとめて依頼するかで変わります。
いずれも事務所によって料金体系が大きく異なるため、依頼範囲を明確にしたうえで複数の見積もりを比べるのが確実です。相続手続きが控えているなら、失踪宣告から相続までを一括で見積もってもらうと全体像がつかめます。
申立てから宣告までの流れと期間

手続きは次の順で進みます。
- 申立て:不在者の従来の住所地の家庭裁判所へ
- 家庭裁判所の調査:申立人や親族への照会などで生死不明の状況を確認
- 公告:裁判所の掲示や官報で「生存を知る人は届け出るように」と公告。期間は普通失踪で3か月以上、危難失踪で1か月以上
- 審判・確定:届出がなければ失踪宣告の審判が出て、確定
- 市区町村役場への届出:確定から10日以内に「失踪届」を提出(戸籍の届出で、届出自体に手数料はかかりません)
公告期間が法律で決まっているため、全体では数か月から1年程度かかるケースが多いとされます。相続税の申告など期限のある手続きが控えている場合は、逆算して早めに動き始めてください。
そして、この手続き期間は同時に「最後にもう一度探せる時間」でもあります。宣告の前にできる限り探しておきたいと考えたとき、費用を含めてどんな選択肢があるのか、専門家に状況を整理してもらうことから始められます。





