結婚まで考えていた相手が、実は既婚者だった。信じていた時間ごと否定されたようで、怒りと悲しさ、そして「なぜ気づけなかったのか」という自責が押し寄せているかもしれません。でも、悪いのは偽った側です。見抜けなかったあなたに落ち度があるわけではありません。そして感情の整理と並行して、法律上できることを知っておくことは、この先の自分を守る力になります。
結論:独身と偽って交際・婚約していた相手には、貞操権の侵害や婚約不履行を理由とする慰謝料請求が認められる場合があります。結婚をちらつかせて金銭を出させていたなら詐欺罪が成立する余地もあります。一方、あなたが既婚と知らなかったのなら、相手の配偶者に対して責任を負わないのが原則です。この記事では法的根拠と証拠集め、進め方を解説します。
婚約者が既婚者だった——まず状況を整理する
動く前に、事実の整理から始めてください。ポイントは3つです。
- 何をもって「既婚」と知ったのか:本人の告白か、第三者からの情報か、SNSや持ち物からの推測か。確度がどの程度かで、次にすべきことが変わります。
- 交際・婚約の経緯を記録する:出会った時期、独身だと告げられた場面、プロポーズや両親への挨拶、指輪や式場の話。メッセージの履歴は消さずに保存します。
- 金銭のやり取りを洗い出す:貸したお金、負担した費用、渡した金品。振込記録やレシートを集めておきます。
交際相手が既婚者だったという事態は、婚約段階に限らず起こります。マッチングアプリで出会った相手に疑いがある段階の方は、マッチングアプリの相手が既婚者か確かめる方法から読むことをおすすめします。
マッチングアプリで婚活していた頃、真剣に交際していた相手の言動がどうも噛み合わず、後から既婚者だと分かって呆然としたことがあります。当時の私は「疑う自分が嫌だ」と確認を先延ばしにしていました。今思えば、違和感の段階でメッセージや約束の記録を残しておいたことだけが、後で自分を守ってくれました。
慰謝料請求の法的根拠——貞操権侵害と婚約不履行
既婚者だと明かさずに交際していた相手への慰謝料請求には、主に2つの法的構成があります。

1つ目は貞操権の侵害です。 独身だと偽って交際し、肉体関係を持っていた場合、あなたの貞操権(誰と親密な関係を持つかを自分で決める人格的利益)を侵害する不法行為(民法709条・710条)として、慰謝料が認められた裁判例があります。鍵になるのは、あなたが既婚の事実を知らず、知り得る状況でもなかったこと、そして相手が独身と積極的に偽っていたことです。
2つ目は婚約不履行です。 婚約が成立していた場合、相手は既婚者である以上その約束を果たせません。偽りの婚約によって精神的損害を受けたとして、慰謝料請求の根拠になり得ます。婚約の成立を示すもの——婚約指輪、両親への挨拶、結納、式場の予約、結婚を前提とした言葉の記録——が重要な証拠になります。
慰謝料の金額は交際期間や経緯、妊娠・退職など被った不利益の大きさによって幅があり、一概には言えません。また、不法行為にもとづく損害賠償請求権には時効があり、損害と加害者を知った時から3年で消滅するのが原則です。放置せず、早めに動くことが大切です。
「結婚詐欺」として刑事責任を問えるケース
「結婚詐欺で訴えたい」と考える方は多いのですが、刑法上の詐欺罪(246条)が成立するのは、人を欺いて金銭などの財産を交付させた場合です。結婚する意思がないのに結婚をちらつかせ、「式の費用」「事業の立て替え」などの名目でお金を出させていたなら、詐欺罪に当たる余地があります。振込記録や借用書、金銭を求められたメッセージを揃えて警察に相談してください。
一方、金銭被害がなく「気持ちを裏切られた」だけでは、刑事事件として立件するのは難しいのが実情です。その場合は前述の民事上の慰謝料請求が中心になります。
刑事でも民事でも、出発点になるのは「相手が本当に既婚である」という事実の確認です。確証がないまま問い詰めれば、証拠を隠されたり関係を断たれたりするおそれがあります。動く前に、事実確認の方法を専門家に相談する価値があります。






