結婚を考えている相手、あるいは雇っている社員。信じたい気持ちはあるのに、どうしても拭えない違和感がある。「素行調査を頼みたい。でも、そんなことをして違法にならないのだろうか」——そう立ち止まっているあなたは、むしろ慎重で誠実な方だと思います。相手のことを確かめたいと思うこと自体は、大切な決断を前にした自然な感情です。
結論:素行調査の依頼そのものは違法ではありません。探偵業は探偵業法に基づく届出制度のもとで営まれ、尾行・張り込み・聞き込みは法の枠内で行われる限り適法です。ただし、差別目的・ストーカー目的など調査結果を違法行為に使う依頼は受けてもらえず、手段が違法な調査は依頼者にも責任が及びます。この記事では合法と違法の線引き、社員の素行調査の注意点、依頼前の確認事項を解説します。
素行調査そのものは違法ではない——探偵業法という枠組み
まず前提から整理します。素行調査とは、対象者の行動・交友関係・生活実態などを、尾行・張り込み・聞き込みといった方法で確かめる調査です。「人を調べる」と聞くと後ろめたい響きがありますが、この業務は探偵業法(探偵業の業務の適正化に関する法律)という法律で正面から位置づけられています。
探偵業を営むには公安委員会への届出が要件とされ、業者には契約時の重要事項説明や書面交付などの義務が課されています。つまり素行調査は「グレーな裏稼業」ではなく、ルールの内側で運用される制度上の仕事です。婚約者の生活実態を確かめたい、社員の勤務外の行動に業務上の疑いがある——こうした正当な目的での素行調査の依頼は、違法ではありません。
ただし、同法は探偵に特別な権限を与えるものではない点も重要です。探偵業法第6条は、探偵業務の実施にあたって他の法令で禁止された行為が許されるわけではないこと、個人の権利利益を侵害してはならないことを明記しています。合法かどうかの分かれ目は、「誰が調べるか」ではなく「何のために・どんな手段で調べるか」にあります。
違法になるのはどんな場合か——「目的」と「手段」の2つの線
素行調査が問題になるパターンは、大きく2つに分けられます。

**1つ目は、目的が違法な場合です。**探偵業法は、調査結果が犯罪行為や違法な差別的取扱いなどに用いられることを知ったときは、その探偵業務を行ってはならないと定めています。具体的には次のような依頼です。
- 別れた相手の居場所を突き止めてつきまとう(ストーカー規制法に抵触するおそれ)
- DVの被害者が逃げた先を探し出す
- 出身地や国籍などを調べて結婚や採用の判断に使う(違法な差別的取扱い)
- 相手を脅す・復讐する材料を集める
このため探偵業者は契約時に依頼の目的を確認し、調査結果を違法行為に使わない旨の誓約書を依頼者から受け取ることが義務づけられています。目的を偽って依頼し、結果を悪用すれば、責任は依頼者自身に及びます。特に出身や国籍に関わる調査が禁じられる背景には重い歴史があり、詳しくは身元調査と結婚差別の記事で解説しています。
**2つ目は、手段が違法な場合です。**目的が正当でも、住居への侵入、無断のGPS機器の設置、なりすましによるSNSへのログイン、盗聴器の仕掛けを伴う手法などは、それぞれ住居侵入罪、ストーカー規制法、不正アクセス禁止法などに触れるおそれがあります。こうした手段を平然と提案してくる業者がいたら、契約すべきではありません。
私が相談したときも、最初に聞かれたのは「調査の結果を何に使いますか」でした。結婚の判断のためだと伝えると、できること・できないことを紙で示してくれて、誓約書にも署名しました。きちんと目的を確認されたことで、むしろ「ここは信頼できる」と感じられたのを覚えています。
社員の素行調査は違法?企業が依頼できる範囲
「社員 素行調査 違法」と検索して来られた方もいるはずです。企業が社員を調べることは、一律に違法ではありません。横領や経費の不正、情報漏えい、競業避止義務違反の疑いなど、業務上の正当な必要性があり、調査の範囲がその目的に見合っている場合、素行調査が認められる余地はあります。無断欠勤中の社員の安否や勤務実態の確認も同様です。
一方で、企業側には明確な制約があります。職業安定法に基づく厚生労働省の指針では、採用の場面で本籍・出生地、思想信条、労働組合への加入状況や社会運動歴などの情報を収集することは原則として認められていません。採用前の身元調査でこれらに踏み込むことはできず、在職中の社員に対しても、業務と無関係な私生活の広範な監視や思想の調査は、プライバシー権の侵害として損害賠償の対象になり得ます。
| 観点 | 認められる余地がある例 | 問題になりやすい例 |
|---|---|---|
| 目的 | 横領・情報漏えい・競業の疑いの確認 | 思想信条・私生活全般の把握 |
| 範囲 | 疑いに関係する行動に限定 | 休日の交友関係まで網羅的に監視 |
| 場面 | 具体的な問題行動の兆候がある | 採用時に本籍・出身地を調べる |
企業として検討する場合は、就業規則上の根拠や調査の必要性を整理したうえで、探偵社の無料相談で「この目的・範囲で受けられるか」を確認するのが現実的な進め方です。






